ビビッドの手帳

最近、クラブにばっか入り浸ってるから久々に街に繰り出した。

……やめておけば良かった。
見たくも無いものを見る羽目になってしまったのだから。

こっちに来てメイクも身なりも人生の楽しみ方も碌々分らない時、
一人が嫌で夜中も遊び呆けてた時に出会った奴。
大学生で外面が良くて誰にでも優しくて男女共にモテて羽振りもいい。表面上だけは。
そして……アタシが思いっきり失恋した相手でもある。クソ優男め。

見たくなかった。もう二度と。
相変わらず両脇に可愛らしい女子を抱えて楽しそうに歩いていた。
それはもう、アタシなんか目じゃないくらいのゆるふわモテ系とか森ガール系とかのとびっきり可愛らしい女の子たち。

「ションベン臭ぇガキが大人と付き合おうっつぅのがおこがましいんだよ。わかんねぇの？」

脳内で再生された言葉が反響して居た堪れなくなって、
さっさと踵を返して逃げるように反対方向を走り抜けた。
――ああ、逃げ出すとは情けない！

零れそうな涙は滴とはならずに、再びアタシに吸い込まれた。
これしきで泣いてなんていられない。
見返そうと誓ったじゃないか。

人通りが少ない通りに出て、スレカを出してキャリバーに跨り別の繁華街へと向かう。
今日ばかりは逃げて家で一人で悔し涙をすることは許せないから。

憂さ晴らしをするため一人、アミューズメントセンターを巡る。
ボーリング。ダーツ。クレーンゲーム。
結果はからっきし、頭は未だ冴えやしない。